飲食店舗造作譲渡・売却金額の査定や相場、概算の計算方法は

居抜き店舗の売却・譲渡の相場額の取り決めや査定方法が知りたい。見積もりから売却まで要する期間は?リース残があっても可能か?手元に残る金額の結果は?

実は売却金額の査定方法や仲介報酬、手数料は共通のルールに基づいて算出されていません。居抜きの造作譲渡の権利売買に関するガイドラインも法整備もなされていないのが実状なんです。

造作譲渡には壁の装飾や間仕切りのなどの内装造作、建物付属設備のカウンターやオイルトラップなどの造作があります。対し、食器、調理機材などの什器、コールドテーブルなどの厨房機器や器具、接客テーブルや椅子などのホール用品、電気機器や空調設備、映像・音響など一つひとつが売買できるものは、中古用品取扱いのリサイクルショップや質屋などの古物商と同じく古物営業法で規制されています。
要するに造作譲渡の査定は不動産など仲介業者の独自ルールで売却金額を決めているわけです。

譲渡の売却金額の算出方法は一定ではなく、公表もされにくく古物商にもあり得る個人の価値観や次のお客様への先を見越した感覚と交渉によっても大きく変わるものです。

譲渡・売却金額の算出方法例
店舗のエリア・公示地価・路線価、広さ(10~20坪が人気)・形・階などの立地、設備・什器・備品の年数、年商・利益、内装造作原価償却・耐用年数、集客力・評判、清潔、営業年数、業態、将来性・・・などの総合的判断となります。
坪単価×坪数×5~8倍位(面積によって割合は変化)を基準として算出+総合判断

・一等立地 30,000×坪数 ・標準立地 20,000×坪数 ・1.5等立地 15,000×坪数 2等立地 10,000×坪数

例えば標準立地20坪の店舗は200万~320万円を基準に査定

原価償却・耐用年数から算出+総合判断

<建物附属設備>

店舗簡易装備(3年)電気設備・照明設備(15年)蓄電池電源設備(6年)給排水設備(15年)衛生設備(15年)
ガス設備(15年)
※上記設備の耐用年数は建物オーナー、以前のオーナー、現オーナーの工事関与が別々なことが多いため、この通りにはなりません。

<店舗内装用の器具・備品類>

陳列棚、陳列ケース(8年)冷凍機・冷蔵機付の陳列棚、陳列ケース(6年)冷房用・暖房用機器(6年)
電気冷蔵庫、電気洗濯機その他電気・ガス機器類(6年)氷冷蔵庫、冷蔵ストッカー(4年)パソコン(4年)
レジスター、タイムレコーダーなど(5年)音響機器(5年)

<その他>

店舗用テーブル・椅子(5年・金属のものは15年)カウンター(店舗簡易装備3年、建物付属設備10年)
可動間仕切り(店舗簡易装備3年、建物付属設備15年)食器(陶磁器・ガラス2年、その他5年)

<建物>

構造・用途(木造・合成樹脂造のもの)飲食店用のもの(20年)
構造・用途(木骨モルタル造のもの)飲食店用のもの(19年)
構造・用途(鉄骨・鉄筋コンクリート造のもの)店舗用のもの(39年)
木造内装部分の面積が30%を超える飲食店用のもの(34年)

※上記の賃借建物の耐用年数は建物のオーナーと内装工事のオーナーが別々なため、同じ耐用年数にはなりません
減価償却は用途や材質に応じて、合理的に見積った耐用年数か、賃借期間を耐用年数とすることができるようになっています。
賃貸借期間によらない場合、内装工事の耐用年数は概ね10年から15年で減価償却するのが一般的です。

上記の購入費や工事費から査定
例えば店舗用テーブル・椅子を200万円で購入後6年経過の売却金額は0円ですが、古物商判断では○○円となります。

③優良飲食店舗(企業)まるごとの売却価格は年間利益の2倍~3倍以上+総合判断

3年平均年商5,000万円 3年平均年間利益600万円 現在社員3名・アルバイト4名 +総合判断

①、②のケースにおいてリース残がある場合は、売却後に相殺するつもりで事前に債務処理をすることになります。少ないケースですが、リース会社によっては次の店舗借主に名義変更ができる場合もあります。また、仲介業者で解決策を持ち合わせている場合もあります。

上記の計算方法は目安にしかなりません。そもそも物件は立地、設備、経過年数などに今までの実績を加えるとオリジナルです。オンリーワンなのです。査定する側も十人十色の判断になるわけですので、最終的には売り手と買い手の合意にあるものだと思います。

居抜き譲渡や売却は2000年頃からはじまり、2010年頃までは居抜き物件は少なく、いわゆる「売り手市場」だったために今より3倍以上の高い金額で売られるケースもありました。

居抜きを考える買い手は、資本力も少なく家族経営や従業員1~2人位の規模ユーザーが多いのだと思います。坪数だと10坪以下から20坪位に人気が集まっています。当然ながら資本さえあれば、スケルトンからすべて自分の構想で作り上げるのが理想です。そのことも相まって、必ずしも箱が大きくても売却金額が吊り上がることはないのです。

今回の新型コロナの影響が、取扱い物件を多くする可能性を秘めています。売り手と買い手市場、需要と供給のアンバランスが混乱を招きかねません。この様にオンリーワンの物件に加え、先も読めない時代に居ぬき物件の計算式を作るのは難しいと思われます。

譲渡・売却の手数料や成功報酬例
*飲食店舗の売却を「専任媒介」(他社での募集依頼はできない拘束)での売却に掛かる手数料は無料とするが、
他社にも依頼する場合は、造作売買価格の10%(下限20万円)とする。
30万円または 飲食店造作売買金額の10%のいずれか低い金額
※消費税が加算されます。売却の手数料を低く設定している場合は、微妙に査定に影響が出るか、次の賃借人の負担が大きくする場合も考えられます。例えば家賃の1か月分の手数料の他に内外装造作、設備一式譲渡権利金分として〇〇〇万円の3%~5%+αとか一律50万円が加算されたりします。
前借主が売却の際にリース残がある場合は、解決のための手数料や廃棄料などの加算金はあると考えた方が良いと思います。また、次の項目のように「 企画報酬料 」「 店舗維持費 」「 広告料 」「 情報提供料 」「 店舗資産譲渡仲介手数料 」など賃料の1か月分以外の名目で新しい賃借人から別途手数料を徴収している場合もあります。

そもそも、居抜き売買は家主(買主の場合も)、売主(前店舗借主)、買主(新店舗借主)、仲介者(買主の場合も)ともにメリットがあるから契約します。当然ながら合意のうえで取引されますが、転貸(賃借の名義変更と造作・備品の売買)は黙認される取引扱いでもあるため、手数料や成功報酬は宅建業法に触れません。当然ながら民法等によっての制限はありますが、基本的には公序良俗の常識的な判断にゆだねるしかないことです。ただし、この取引はすべての当事者が望んでいることでもあるため、理には適っていることから市民権も得ているという事になります。

現在の店舗の経営や運営を業務委託で店舗継続する方法は一つの選択肢です

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